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「優夢…ううん、あれは、銘ちゃんだ」
泉を見ながら呟くように穂は言った。
呟くようだが、待ち望んでいたかのような穂の声音。
待ち望んでいた穂には悪いが、もしこの巨大な風の原因が彼の待っている『銘』とやらだったらとんでもない。
黒い少年は泉を睨んで小さく舌打ちした。
黒い少年には止めようがない者だということを悟ったからだ。
「天使!! あれは…」
あれはヤバい、黒い少年がそう叫ぼうとしたが、それは凶暴な風によって遮られた。
ごうっ、と叩かれるような痛くて重い風が黒い少年を襲う。
穂も同時にその風に襲われるが、全く気にする様子がない。
泉から巨大な水柱が立った。
強すぎる風と大きな水柱を避けるように木々からも茨からも意志が消える。
水柱がゆらりと傾いで、崩れるだろうと黒い少年は思った。
けれど黒い少年の小さな期待はピタリと止まった静寂によって打ち砕かれる。
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