たとえばこんな1日

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「大田さんの言葉は心に響かないんですよ」 私は家へと向かう電車の中で、頭の中をループし続けるその言葉と戦っていた。 大学4年になって、3年の後期から始まった就職活動も今がピークだ。毎日毎日企業に行っては面接を受ける日々。いや、面接に進めるだけましな方だ。ほとんどの企業からは書類審査や筆記試験の段階で「お祈りメール」が来るのだから。 そんな中、今日もなんとか筆記試験をパスして面接にこぎつけた。そんな大事な面接で、社員の人に言われた言葉がこれだ。間違いなく落ちるだろう。 「…なんだってのよ」 思わず声に出してつぶやいてしまった。隣に座っている整髪料のにおいがキツイおじさんがこちらをちらりと見たが、そんなの気にしない。気にしてやらない。こっちはそれどころじゃないっての。 何社も何社も受けては落ちて、毎日毎日面接を受けて、もう自分が何をしているのかわからなくなるくらいだった。 きっとあの社員の言葉も、そんな私の状況を見抜いてのものだったのだろう。 それでも、それでも傷ついた。危うくその場で泣いてしまうところだった。そんな恥ずかしいところを初対面の人に見せるわけにはいかないのでもちろん堪えたけど。
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