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なんか、黒い煙が…
目の前をもくもく流れる黒い煙。
そして、
ガシャン!ガタン!と崩れ落ちた壁。
隣と部屋との壁が崩れ落ちた?
真っ赤なそれが目の前まで迫ってきている。
これ、は…
いつかのテレビで見た…
(火事ってやつだ)
赤い炎がゆらゆら揺れてる。
俺は動くことは出来ないし、何も出来ない。
ひとつだけ思うなら、たっちゃんがこの場にいなくてよかった。
たっちゃんが火事に巻き込まれないでよかった。
俺の世界はいつもたっちゃん中心で回っていて、ガタガタに縫い付けられている右腕と肩。
これは、たっちゃんが幼稚園のとき、仲良しのカメと俺を取り合ったときにできた傷。
あのとき、たっちゃんは何回も謝ってくれたっけ。
左足の先…少し黄ばんでるのは、たっちゃんが小学校に入ったばかりのとき…
お醤油をこぼしちゃってできた跡。
たっちゃんは泣きながら、何回も洗ってくれたっけ。
痛いくらいゴシゴシ洗われたことを思い出した。
たっちゃんが、ひとりぐらし始めるときも俺はダンボール箱に詰めないで抱いてこのアパートまで連れてきてくれた。
いつでも、どんなときも
俺をたっちゃんは連れてくれて、たっちゃんが俺のすべてで…
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