第1章【転落平穏】

4/36
前へ
/91ページ
次へ
追試を終え、優樹と俺は学校を後にした。 「いやぁ~、やっと解放されたわ」 優樹は大きく伸びをすると携帯で誰かに電話をはじめた。 「誰にかけてるんだ?」 「コレだよ。コレ」 そう言って優樹はにやけながら小指をたてる。 「お前もはやく彼女の一人くらいつくれよ。毎日が楽しいぞ」 俺はため息をつくと、先帰るぜ、と言って誇らしげな優樹を置いて先に帰路へついた。 程なくして、自宅に到着する。 俺は町外れの小さなアパートで一人暮らしをしている。 そう言うとクラスの連中は羨ましがるが、現実はかなり厳しい。 部屋に入り荷物を床に投げると冷蔵庫を開ける。 中には飲料水のペットボトルが大量に入っている。 それを一本持つと、部屋の真ん中にある机に置きテレビをつけた。 テレビからはニュースキャスターが今日あった出来事を話している。 キャップを開けて一口水を飲むと気になるニュースがテレビから聞こえてきた。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29人が本棚に入れています
本棚に追加