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少し色素が抜けて茶色がかった髪に、くりくりとした大きい眼。
小柄な体格で、ちょうどリスを思わせる。
男というより、男の子という表現の方が正しいかもしれない。
同じ年のはずなのだが。
「よ、間宮」
「あ、おはよう。進くん、一輝くん」
礼儀正しく挨拶する『アイツ』……『間宮和人』である。
成績優秀であり、学年トップもしばしば。
そのまじめな人柄から、他人をあまり寄せ付けないが、根は優しい奴であるということを友人の進と一輝は知っている。
一輝は早速尋ねた。
「間宮はやっぱ東大?」
「え、あ、うん……まあ」
間宮は自分の席で荷物を取り出しながら恥ずかしそうに答える。
進は「お~」と歓声を上げた。
「ほかは考えてない……と?」
「うん」
一輝がニュースキャスターのように質問を続ける。
間宮は淡々とノートを開き、筆記用具を取り出す。
「いったいどんな勉強法を行っているんですか?」
「……」
答えは返ってこなかった。
間宮はすでに早くも数学の勉強に没頭していた。
一輝は邪魔するわけにはいかないなと言うように、肩をすくめて、参考書のぺージをめくった。
進も自分の勉強へと戻る。
そうしているうちに、一人、また一人と教室に入ってくる。
彼らは軽い挨拶と二言三言の会話をした後、自分の勉強を始めた。
そのため、教室は基本的に静かだった。
ところがこの後すぐ、その静かな教室が不意にざわめくこととなる。
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