Act1~一日目と月~

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「どうしたの美緒!?」  廊下で女子達がうるさく騒いでいる。 それに応じて、クラス内の男子達も廊下を見ようと首を伸ばした。  『神崎美緒』は一年の頃からクラスの、学年の憧れを集めていた。  さらさらとした長い髪、大きな瞳、スッとした鼻、ふっくりした唇、きめ細かくさらりとした肌。 女として全てが満点に近い。  しかし彼女はそれを鼻にかけることもなく、誰とでも自然に優しく接する。  明るく、誰の悪口も言わず、かといって誰にでも賛同するわけでなく、自らの芯を持って行動する。  進は何人かの男子が彼女に告白しているのを目撃したことがある。 結果は肩を落とした男子の様子からわかった。  二年の時の修学旅行の夜、布団の中で「学年の中で一番カワイイのは?」という議題で議論した結果、全会一致で美緒に決定したこともある。  そんな彼女の変化に誰もが気付かないわけがなかった。  教室に入って来た美緒の豊かな髪は、肩の上辺りででバッサリと切られていたのだ。
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