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皆、何かあったのかと美緒に詰め寄る。
しかし当の本人は笑顔で「イメチェンよ」と繰り返しているだけだった。
「なんかボーイッシュでカワイイ~」
「たしかにカワイイ~」
と、女子たちが口々に告げる。
「ありがと」
美緒は少々恥ずかしそうにうつむいた。
一輝は「悪くない」とつぶやいている。
彼も美緒にお熱の一人だ。
進は遠くでその様子を眺めながら、なんとなくだが、その笑顔に少し影があるのを感じていた。
不意に美緒と目が合った。
進はすぐに窓の外へ視線を逸らす。
太陽がすっかり顔を出し、夏の明るい日差しが校庭に降り注いでいた。
そんなすっかり騒がしくなった教室に三年から新しく担任となった亘先生がキビキビと入ってきた。
立っていた生徒たちは機敏に自分の席に戻り、一気に静かになる。
補講という形のため、朝のホームルームなどは無く、そのまま授業が開始した。
進はぼんやりと美緒の髪を切った理由を想像していた。
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