Act1~一日目と月~

14/23
前へ
/247ページ
次へ
<2>  夏期講習は午前中で終わった。  一輝が進と間宮を近くのファストフード店に誘い、一緒に昼食を取ることになった。 「オマエさ、食ってるときぐらいそれ開くのやめろよ」  一輝はてりやきバーガーをほおばりながら、怪訝な目で間宮に苦言を呈する。 間宮はしぶしぶ参考書を閉じた。  進はそのいざこざにも気づかず、ボォーっと窓の外を眺めている。 「進、腹痛いなら俺が食べるからな?」  一輝がまったく手がつけられていない進のダブルチーズバーガーに手を伸ばす。 「あ、いや食うから!」 「……美緒ちゃんのことか?」  一輝がにやっと笑いながら尋ねる。 「いや……別に」  進は半分正解だよと心の中で答えた。 「進、ぶっちゃけチャンスだぞ」 「なにが?」 「女の子ってのは何かあった時に髪切るんだよ。たとえば、男にふられた時とかな……」  意味深につぶやく一輝。  進はまた視線を窓の外へと戻した。
/247ページ

最初のコメントを投稿しよう!

80人が本棚に入れています
本棚に追加