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〈1〉
「夏は朝早く起きても何の得にもならない」
寝ぼけ眼をこすりながら、『青空進(アオゾラススム)』はそう感じた。
寝苦しい汗ばむ夜のせいで、前日の疲れはすっきり取れず、それでいて朝の空気も湿気を保ったままジメジメと肌にまとわりついてくる。
そのくせ日差しは弱く、思った以上にひんやりと冷気を感じる。
こんなに矛盾を帯びている朝に早起きしても、三文どころか、四文五文の損ではないだろうか。
進は冷気を感じながら、Tシャツにスウェットという寝たときそのままの格好で家から出てきたのを後悔した。
朝5時。まだ自宅付近の家々の雨戸は閉め切られ、静かに白い霧がたなびいている。
まるで自分が一人でいるような錯覚すら覚えた。
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