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『南海町』
都市部から電車で数分のこの街は、そこで働く人々のベッドタウンとして発達した。
そんなに都会でもなく、ましてや田舎でもない。
住みやすい快適な町。
少なくとも進はこの町が好きだった。
そんな町での暮らしもはや18年。
進は高校三年目の夏を迎えていた。
小鳥すら起きていない朝の住宅街を、進は歩いている。
もともとボサボサで、ワックスに歯向かう硬い頭髪は寝起きのせいで、てんでばらばらな方向へと自由に髪型を形成している。
眼は少し大きめ、鼻や口には特に異常なし。
イケメンでもないし、ブサメンでもない、いわゆるフツメン。
体型もやせているでもなく、太っているわけでもなく、普通。
学力も運動神経も高いというわけではなく、低いというわけでもない、普通。
そう、青空進はどこを取っても悪いところはなく、かと言って良いところもない、本当に“普通”の高校生だった。
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