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3年2組の教室に入ると、派手な金髪が目に付いた。
その男は長身の体をかがめて机の上の参考書を眺めている。
彼以外教室に誰もいない。
「おっ、進」
進に気づいた男が明るく声をかけてくる。
「よ、一輝」
彼の名は『和田一輝(ワダイッキ)』。
明るくギャグを飛ばす彼は多少ウザがられたりもするが、クラスの人気者である。
そしてかつ、進の親友でもあった。
そんな彼とはそんな縁があってか、三年間同じクラスだ。
「進、今日はぇーな」
「まあな」
進が自分の席に荷物を置くと、一輝が早速話しかけてくる。
進は彼と話すと自然と笑みがこぼれた。
「そういえばさ、進は志望校決めた?」
「あ、いや……まだいろいろと悩んでる」
一輝の突然の問いに苦笑いをして答える。
高校三年生。それは将来を決める上で重要な位置にいる人間であろう。
進学か、就職か。いずれにせよ、過酷な競争が待っている。
『涼修学園』は県内でも屈指の実力校である。
そのため、生徒の大半は進学を希望する。
進も一輝もそんな生徒のうちの一人だった。
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