第一章「才色兼備」

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「まあ、こんな館で閉じ込って生活してれば時間の感覚も狂っちゃうよ。」 友子は低い声で云った。 「あら、どうしたの?そんな暗い顔して。何か厭な事でもあったの?」 「厭な事は無いけどさ。」 好子はそう?と云って立ち上がると、友子の目前まで近付いて云った。 「新しい制服もようやく慣れてきたって感じね。この髪型も可愛い。」 好子は笑った。 この人は本当に分からずにいるのだろうかと友子は思った。そして自分より少し背の高い好子を見上げるように睨んで云った。 「お姉ちゃん、けっこう噂になってるよ。今回のこと。」 「今回のことって?」 好子は笑った。 「そのさ、お姉ちゃんの、今回の結婚の事。」 「どんな事?」 好子は笑った。 「お姉ちゃんは遺産狙いで結婚した、とか、そのために保険にも入らせた、とか。」 「そう。」 「誰だってそう思うよ。そう思うのも仕方ないよ。だってさ、だって、」 「だって?」 「お姉ちゃんの旦那さん、ううん、このでっかい館の主人、今年で78歳じゃん。」 「そうね。」 好子は笑った。 友子は顔を歪ませた。
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