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駅に着いて気が付くと雨は刻一刻と激しさを増していた。
母にこっちに住むように言われ帰ってきたある日、
もう帰ってこないだろうと思っていた町、
電車は一時間に一回来るか来ないかで、
電気はぽつぽつあるこんなちっぽけな町で自分は育った。
特に特別な感じがないから小学校の中学年から都会にすんでいたのだが、
親は一人暮らしの自分が心配らしい。
おせっかいだと流していた電話の中におかしな音が聞こえた。
好奇心でこの町に戻ってきたが、
ある意味帰ってきてもなにもない。
平凡な田舎に飽き飽きしている。
そんなことを考えながら町の方に目をやると、
自分と同じくらいの女の子がそこにただずっとなにもせず立ちすくんでいた。
雨にうたれているせいか髪は光ってただ広場から駅を見つめていた。
視線には力がなく、
弱々しい瞳でただ駅を見つめていた。
その時母が言っていた迎えの存在が彼女であるのがわかった。
俺は彼女に何気なく近寄った。
彼女は俺の存在を認識すると冷えて辛いはずなのに笑ってみせた。
その後ホッとしたのかふらついて倒れかかった。
俺は、この時触れた彼女の手が人の手とは思えないほど冷えていることに気が付いて、慌てて実家まで走った。
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