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夏休みの終わりにふと実家に戻って転校することになった。
そんな俺は今日雨の中を走り抜けて実家に飛び込んでいた。
両親はあまりの激しさに驚いていたが、自分にはそんなことが頭の範疇になかった。
自分の意識が戻ったのは彼女を自分の部屋で寝かせた後だった。
どのくらい雨にあてられたかわからないがずっとまっていたのだと思って看病していた。
数分で彼女は意識を取り戻した。
「おい、大丈夫か?」
言葉に反応して彼女は笑顔を返してくる。
どうやら大丈夫なようだ。
それがわかると俺はホッと息を吐く。
「おかえり、龍也君」
言われてびっくりした。
自分は全く彼女が誰なのかなんてわからないのに、
あっちは俺のことを親しく呼んでくる。
驚いている自分に彼女は首を傾げて問う。
「矢川龍也君…ですよね?」
誰だかわからない女の子にフルネームを言われて焦ったが俺は頷いた。
「やっぱり、間違ってたらどうしようかと…おぼえてるかな?私のこと」
そう聞かれておぼえてないときっぱり即答した。
「……そぅ」
そう呟いて哀しげな顔をして彼女は起き上がった。
そして笑顔で走り去っていった。
後ろ姿は雨がまだ弱まらない外に飛び出して消えていった。
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