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深い深い海藻の森
上を見上げればキラキラと
光の輪が幾重にも重なり
下を見下ろせば海藻の絨毯の中を
小さな魚が群れを成して
泳いでいるのが見える。
時折キラリと光を反射する小魚の鱗
海を彩る生命の輝き
どこまでも透き通った濁りの無い世界
広大な平原の真ん中、地平線の様に
遥か彼方まで見渡せる水中の風景
静寂が支配する穏やかな
潮の流れに身を任せていると。
P.P.P.………、
静寂をぶち壊す無機質な電子音
「何だ…?」
気持ち良く眠っていたら
水をぶっかけられた様な、無理やりに
叩き起こされた様な不快感が
穏やかだった心を荒波立てる。
神秘的な風景を現実に引き戻した
元凶を探すと直ぐにそれは見つかった
潜水船のエアー残留が
切れかけている事を報せる警告音。
これはいけない、思わず笑みを浮かべ
浮上用のレバーを引き上げる
もう少しで風景に見とれて
窒息死するところだった
――いや、それでもいいかも知れない
この静かな海で眠り続けられるなら。
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