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鋼鉄の塊が海底から海上へ
静かに浮上していく…、
矛盾している様にも見えるが
事実なのだから他に言い様がない。
各種照明は最低限に抑えられ
自分の腕すら闇に隠されている
さっきまで外の様子も
モニターで見れたのだが
それも出来ない
バッテリーが切れ非常電源に
切り替わった今再度の
充電無しでは再びこのモニターに
灯が灯る事は無い。
「くくくっ………、
まったく酷い冗談だ。」
苦笑するしかないではないか
画面越しの風景に見とれた挙げ句
窒息しかけて電力も尽き
危うく何百万ドルもする最新の機材
もろとも沈没船の
仲間入りを果たしたとなれば
まず成仏出来まいと思ったのだ。
水中の静寂とは違う
同じなはずなのに息苦しさを感じる
薄暗い操縦席の中
永遠に続くかと思われた静けさは
唐突に破られた、
軽い衝撃と胃袋が浮き上がる様な感覚
機体に伝わる鈍い振動
頭上のハッチが解放され
陽の光が暗闇を塗り潰す。
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