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見渡す限りの大海原、 水平線は微かに弧を描き 見える範囲には陸地の影も見えない 本物の大海原。 天候は快晴、風も凪の状態と まさに平穏無事な海原を 一隻の船が波しぶきを上げながら 進んでいた。 アグリィ・ホエール号と 名付けられたそれは クジラと呼ぶには相応しくない せいぜいシャチかイルカと 呼ぶべき等級の 漁船を二回りほど大きくした様な 船だった。 白を基調とした船体に 青いラインを波状に 幾本も描いたデザインは確かに 海を行くクジラに 見えなくもなかったが ペイントが剥げ落ち ところどころに浮いた錆が そんなデザインを台無しにしている。 しかし、この船を見て 漁船と判断する者は少ないだろう 遠目からならともかく 全体像を見渡せる距離まで近寄れば まず間違える者はいない。 その姿は原油や資材を 運ぶタンカーに良く似ていた、 船首付近に平べったい 壁の様な艦橋があり 船体の七割方がクレーンと コンテナで埋まっている。
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