第一章-episode1-

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 ハルナの家(だと思われる)を出ると電灯と民家がまばらに並ぶ田園風景が広がっている。だが、民家に電気は点いていないから、真っ暗だ。 こんな所じゃあいくら歩いても、移動手段が見当たる気がしないが。  「何で行くんだ?そして、何処へ?」 「バスと電車で、湘南へ」  何故わざわざ暗闇の湘南で法術の練習をするのかは全くわからない。 「バスって、バス停が見当たらないが?」 「そこの県道に」  確かに、県道にバス停があって『並塚』という名前が付いている。時刻表を見る限り、現世とそう変わりは無いようだ。それどころか少し多く感じられる。  ハルナは、適当に来た黄色いバスに俺を連れて乗り込む。運賃はおごってもらってしまった。今度何かで返さなくてはな。  「生前に乗ってたバスに似ているんだが」 「あっ、そう」  なにかワクワクしている様で、俺の話など聞いちゃいない。何がそんなに気になるんだ?
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