☆序章☆

3/3
前へ
/14ページ
次へ
 一人の姫が念風に憑かれた。  姫は風にあたった瞬間バタリと倒れた。 「姫様!?」  姫付きの老いた女房は慌てて姫のもとに駆け付け抱き起こす。    姫の長く美しい髪が姫の顔を遮り隠している。  女房が乱れた髪を整え姫のかお色を伺う。 「ひ!」  女房は姫の顔を見て恐れた。  姫の顔は般若の面のように恐ろしいモノと化していたのだ。  目は爛々と輝き、激しい炎を思わせた。  そして苦しそうに体を悶えさせる。 「ドウシテイッテシマッタノ…ドウシテ……ワタシヲノコシテトオクヘ…正樹サマ…ドウシテ……」    とても悲しく喉を涙が締め付ける言葉を紡ぐ。  愛おしい者をなくして悲しく思うそんな声だった。    その声は突然激しい怒りの言葉を紡ぐ。 「コノウラミハラサズニオクベキカ!」  姫は今はいない誰かを力いっぱい掴むような手付きで、空をつかみそのまま、倒れた。  怒りに表情を強張らせた顔は何時もの姫に戻っていただが…    姫の周りに不吉な影の気配は消えなかった。    老女房は姫に長く仕えているがこんな事は初めてだった。  姫に鬼が憑いてしまった。  女房は必死になってただ助けてくれるものを呼ぶ。 「だれかーー!だれかー!早う陰陽師を!!」    あの人はかえってこない…  私を置いていってしまったから…  必ず私のもとに帰ってくると笑顔で私告げたのに…    わたしはまっていたのに……
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加