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一人の姫が念風に憑かれた。
姫は風にあたった瞬間バタリと倒れた。
「姫様!?」
姫付きの老いた女房は慌てて姫のもとに駆け付け抱き起こす。
姫の長く美しい髪が姫の顔を遮り隠している。
女房が乱れた髪を整え姫のかお色を伺う。
「ひ!」
女房は姫の顔を見て恐れた。
姫の顔は般若の面のように恐ろしいモノと化していたのだ。
目は爛々と輝き、激しい炎を思わせた。
そして苦しそうに体を悶えさせる。
「ドウシテイッテシマッタノ…ドウシテ……ワタシヲノコシテトオクヘ…正樹サマ…ドウシテ……」
とても悲しく喉を涙が締め付ける言葉を紡ぐ。
愛おしい者をなくして悲しく思うそんな声だった。
その声は突然激しい怒りの言葉を紡ぐ。
「コノウラミハラサズニオクベキカ!」
姫は今はいない誰かを力いっぱい掴むような手付きで、空をつかみそのまま、倒れた。
怒りに表情を強張らせた顔は何時もの姫に戻っていただが…
姫の周りに不吉な影の気配は消えなかった。
老女房は姫に長く仕えているがこんな事は初めてだった。
姫に鬼が憑いてしまった。
女房は必死になってただ助けてくれるものを呼ぶ。
「だれかーー!だれかー!早う陰陽師を!!」
あの人はかえってこない…
私を置いていってしまったから…
必ず私のもとに帰ってくると笑顔で私告げたのに…
わたしはまっていたのに……
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