契約にご用心

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契約にご用心

 父が事故で死んだ。俺たち二人は、父の莫大な遺産を相続することになった。もちろん、半分ずつだ。  俺と兄は仲の悪い兄弟だったから『兄貴も死んでくれれば良かったのに』と、正直なところ願っていた。  おそらく、兄貴も同じことを願っていただろう。  そこを悪魔に付け込まれたのかもしれない。 「よぉ。お前、兄貴に死んでほしいんだろ?」  突然現れた悪魔は、願いを叶えるが、その代わりに契約者の魂を奪うと言う。 冗談じゃない。俺が死んだら、元も子もないじゃないか。  当然、契約は流れた。他所(よそ)をあたってくれと言ったのが間違いだったことに、気づいたときには遅かった。  そいつは兄のところに行ったのだ。  兄は契約をしたらしい。俺は悪魔に魂を奪われた。  意識が遠のく最中、悪魔が俺に教えてくれた。 「お前の兄貴は、頭がいいな。自分は死なずに、お前だけが死ぬような契約を思いついたんだぜ」  いまさら聞いても仕方の無いことだったが、悪魔がべらべらと喋る言葉が、耳から入ってくる。 「兄貴の契約はな……いや、正確には兄貴の契約ではないな……」  そうか。そんな方法が……
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