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「あの写真の犬は血統書付きのようで、写真の場所もこの家だが、高級品が大好きなあなたの犬とは思えない首輪つけてた。レンタルペットでしょ。」
と、昨日渡された写真を取り出し、そして視線を巡らし、
「それに、この家に犬のいた痕跡はなく、庭に根に毒のある百合や鈴蘭とか咲かしてるし、やっと会えるって部屋に、その生け花まで置いてある。危険な目に合うといけないから、あなたか従者は置かないはず。」
アリスは犬のぬいぐるみを撫でながら、
「昨日遅刻してきましたよね。私、約束を破る生き物ってつい駆除したくなって。あっ、ちょっとイタズラしようとしただけよ、バカな子ほどカワイイ的な。」
アリスは笑顔で携帯をフリフリ振って見せる。
「知り合いに調べさせたの。パーティーにまで連れて行く程の犬を、よく行くエステやショップやパーティーで、誰も見たことないって。」
アリスには、ホストをしながら裏では情報屋をする兄がおり、ハッキリ言ってウザイくらいアリスを溺愛している。
2人で必死に生きてきたのだから、そうなるのが当然といえばそうなのだが。
「そういや俺も見たこと無いなぁ。」
隆治は明るく笑って言った。
「暇つぶし&隆治と遊びたかったってところかな………雪乃丞さん、お茶おかわり。」
と話し、一樹は髪をかきあげ、婦人と従者に笑いかける。
婦人は驚いた顔をし、従者もとい雪乃丞は申し訳なさそうに深くお辞儀をする。
「フフフッ、まぁ少しは楽しめたわ、代金は雪乃丞から受け取って。またね。」
と言い残し、婦人は満足した顔で部屋を出て行った。
その後、アリスは築地のオジサン並みに「もう一声っ!!」と白熱して報酬合戦をし、雪乃丞さんはタジタジだ。
一樹と隆治は縁側に腰を下ろしお茶を啜る。
「ある心理学者が、目や耳や腕や脚など人間の体全てを布や筒で包み、防音の部屋という刺激を最小にした状態でしばらく過ごさせた。最初は何も刺激のない生活で幸せだと思ったが、大抵の人間は3日で気が狂った。人間は刺激がないと生きられない生き物なんだ……」
と、一樹は無表情に話した。
隆治は一樹が何を考えているのか知ってか知らずか、一樹の頭を優しく撫でた。
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