11人が本棚に入れています
本棚に追加
ニャァァァッ
にゃぁっ
話しているように見える。
そして、猫が男性を肉球でポスポス叩き、説教しているようにも見えた。
「ふふっ」
少女は和み、つい声に出して笑ってしまう。
その声に気づいたのか、猫と男性が少女に振り向いた。
男性は、30才前後のように見える。鼻筋は通り、目は涼やかで、唇はふっくらしている。
世間一般的に言うと、イケメンの類で綺麗な黒髪だが、グシャグシャに乱れており、前髪をゴムで結びあげている。服は何故か、下駄に藍色の着流し。
………変態だろうか、と思い少女は一歩後ずさる。
男性は猫の手を持ち、招き猫のようにコイコイとした。
その動作がかわいく、少女はゆっくり近づき、男性のそばに座った。
「こんにちは。」
と少女が挨拶をすると猫が、
ニャァァァ
と応えた。
男性はジッと少女を見つめ、顔にゆっくりと手を伸ばし、
「顔色が悪いね。何か悩み事?」
ヒヤリとした感じがして、少女は、恥ずかしさと戸惑いでビクリと体を震わした。
「あっ…大丈夫ですっ。」
少女は彼の手から逃れるようにソッと離れた。
「……この子は風花。」
男性は猫を愛おしそうにソッと撫でながら話した。
「さっき知り合って、意気投合したんだ。名前が欲しいと言ったからつけた。」
あれ!?
この人まさか電波系か!?
と思い、少しヒイたが、猫が幸せそうなので、まぁいっかと思い、
「名前をつけたってことは飼うんですね。優しいですね。」
と言い、少女が猫の顎を撫でると、猫はゴロゴロ喉を鳴らした。
男性は、
「別に風花と名前をつけただけであって、この子が俺の元に来るかは決まってないよ。野良のが自由だしね。だから、風で自由に舞い散る花で、風花と名付けたんだ。」
と無表情に言った。
少女は何故かムッとして、
「なら名前をつけなければいいじゃないですか。この子が決めるとか適当な事を言って!!」
と語気を強めて話した。
「………風花を心配してくれたんだね。大丈夫だよ。」
男性はソッと少女の頭を撫で、猫は膝をペロペロと舐めた。
頬を温かな液体がつたった。
手で触れると涙だと気づいた。
「………わ、私どうして!?」
男性は、戸惑いながら涙を流す少女に、優しく微笑み、頭を撫でた。
最初のコメントを投稿しよう!