猫と男と少女

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あれからしばらく経っただろうか。 少女は涙を手でグイッと拭い、息を整え、ずっと静かに撫でてくれた男性と猫を見つめ、 「ありがとうございます。」 と言うと、男性は手を引っ込め、猫はヒョイと私の膝に乗った。 「……私、5年前に母親を亡くして、今は祖父母と暮らしているんです。どうしても寂しくなる時があって、私、風花と自分を重ねてしまって、一人じゃなくなって良かったと思ったってしまって………勝手に色々考えてしまって。お兄さんは、風花が決めたら飼うって言ってくれたのに。………今日、人の死を何とも思わない人達を見て、少し動揺していたみたいで、八つ当たりしてごめんなさい。」 少女がそう話すと、男性は、 「死の痛みは自身に降りかかるまで分からないからね。孤独は痛い………誰にも必要とされていないと感じるし、何故生きているのか、死んだ方が楽だと考える。皆、愛されたくて仕方ないんだ………ここにいていいんだよって言われたいし、必要だと感じたい………そぅいや、誰かといるだけで寂しくなくなると友人が言っていた。よければ、お茶でも飲みに来なよ」 と話し、風花を抱き上げフラリと立ち上がって、スタスタ歩いていく。 少女は迷いもせず、慌てて鞄を持ち上げ、制服についた草を払い、彼と猫の後を追いかけた。
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