1人目はレモン味

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指定された三つ星ホテルのカフェで、一樹とアリスは依頼人を待つ。 カフェは、テーブルや椅子などのインテリアは、アンティークで揃えられ、窓の外は庭園になっており、薔薇などの色鮮やかな手入れの行き届いた花々が咲き誇っている。 「失礼いたします。こちらミルフィーユとモカになります。」 と、ピシッとした姿の店員が一樹の前に提供する。 やはり一樹は今日も寝癖ルックだが、服はスーツ姿である。 ウトウトしながらフォークを手に取る。 「こちらはエスプレッソになります。」 と、店員は頬を染めながらアリスをチラリと見、提供する。 「ありがとう。」 とアリスは微笑みかけると、男性は動揺を隠しきれず、アタフタしながら持ち場に戻る。 「せっかく今日は髪もセットしてあげたのに、いつもグシャグシャにするわね。」 と、アリスは溜め息をつき、カップを口に運ぶ。 今日のアリスは、“魔法学園キラリ”の美人教師ピーチのコスプレであり、セクシーさタップリだ。 もちろんこれも自作。 「依頼人はまだかしら。約束の時間からもう10分以上も待ってるのよ。時間も守れないようなクズババアだから犬も逃げるのよ。」 と吐き捨て、赤いダテ眼鏡を左手でクイッと上げ、カフェの入り口に目を向ける。 すると、 「こんにちは」 2人の後ろから声が聞こえ、振り返ると恰幅のいい、大きな宝石がついた指輪をした50代の婦人が従者の若い男性を連れて現れた。 「お待たせしたわね。あっ、私はハーブティーで。」 と店員に言い、2人の前に座った。 一樹はウトウトしかけており、アリスは携帯をバッグにしまい、一樹を起こす。 婦人は従者に視線をチラリと向ける。 従者は女性の後ろに立ち、2人にお辞儀をし、テーブルに一枚の写真を置く。 「この子が雪乃丞ちゃんよ。パーティーで目を離した隙にいなくなって。私のペットですし、誘拐かと思ったのですけど、そういった連絡もないですし。」 と、婦人は涙ながらに語る。 「……雪なのに黒い犬かよ。オバハンが抱きしめすぎてグッタリしてんぢゃん。」 と、アリスは外を見つめながら婦人に聞こえないように呟いた。
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