真っ赤なサンタ

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それは小さなサンタクロースだった。いや、真っ赤な服を着た悪魔のサンタのストラップだった。 「そんなので助かるの?」 「ええ、これさえ作れば助かるはずよ。実際私はまだ、生きているから…。」 亜弥の一言は重かった。前にこの話を知り、助かる為にストラップを作った。それで死なずにすんでいると言う事を3人は感じていた。 「えっ作るって、自分で作らないといけないの?」 恭子が目を丸くして言った。亜弥はニヤリと笑い答えた。 「そりゃそうよ。世の中に真っ赤なサンタクロースのストラップなんてある訳無いじゃない。自分で作るしかないでしょう。」 亜弥は屋上の柵を指先で軽くリズム良く叩いた。3人は顔を寄せ何かを話している。 「私は裁縫苦手なのに。」 「私も。」 「私は大丈夫。」 理恵は自慢気に言っている。残りの2人は半分涙目になっている。 「そうだ。理恵に私達の分も作ってもらおうよ。」 恭子がグッドアイデアと言わんばかしに和美に言った。和美は賛同して頷いた。 「それは駄目よ。」 亜弥があっさりとそう言った。 「何でよ。持っていたら大丈夫なんでしょう。」 恭子は不服そうに言った。亜弥は首を振りながら答えた。 「それは違うわ。自分で作ってこそ意味があるの。」 そう言ったとたんチャイムが鳴った。昼休みも終わり掃除の時間になった。 「とにかく教えたのだから約束は守りなさいよ。」 亜弥は振り返り足早に階段の方へ行った。3人もその後を追うように走った。 「ねぇ~どうする?」 恭子が和美に近づいて持っているホウキを振った。 「う~ん分からない。でも正直、亜弥の話も本当かどうかも分からないし、ストラップの件だって彼女さ言った時に笑って見えたよ。私達を驚かそうとしているのよ。」 「うんうん、私も見た。亜弥は私達が仲良いのをひがんで言っているのよ。」 恭子と和美はそう言いながら自分達を納得させていた。それを黙って見ていた理恵が2人の肩に手を置いた。 「私は一応信じて作るよ。もしあれなら2人の分も作ろうか?」 『本当に。』 2人は飛び上がった。 「でも、念のために自分でも作った方が良いと思うよ。死にたく無いからね。」 すると後ろから怒鳴り声がした。 「お前ら喋ってないで掃除しろっ!」 仁王立ちの先生が立っていた。3人は慌てて掃除を始めた。 時間は過ぎ放課後になった。
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