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「まただ…」
円堂が左を見ながら溢した。俺は円堂を見たが、悩んでいる。何が「また」なのだろうか。反対にいる鬼道を見ると、本を赤いシートで隠している。本のタイトルは英語で書かれている。
(ああ、単語帳か…)
下校中まで勉強する彼を、感心する。
「どうした?」
鬼道が俺を見て言う。鬼道は円堂みたいに鈍感ではなかったなと思い出しつつ、さっきまで思っていたことを言った。
「いや、偉いなと思って」
視線を鬼道の単語帳に合わせる。鬼道は、俺の視線を辿っていく。そして、俺の言葉を理解し、俺を笑顔で見ながら言う。
「お前もやってみるか?」
「遠慮しておく」
嫌みを嫌みで返す奴に初めて会った。これも、天才だからこそこなせる技か、などくだらないことを考えていると左肩を叩かれた。叩かれた方を向くと、円堂の手が肩に乗っていた。そして声が聞こえてきた。
「豪炎寺はあのジュース飲んだことある?」
円堂の指差す先には自動販売機。
「どれだ?」
俺は体の向きを変え、自動販売機に近づく。後ろからちょっと速いテンポで足音が聞こえてくる。鬼道の足音だということは振り返らなくても分かる。
「これ」
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