不思議なジュースとおかしな君と。

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俺は円堂が指差したジュースを見た。真っ白のアルミ缶のそれは、中央にピンク色で「B Y K 」と書かれている。その下には「売り切れ」と赤く光っている。 「いや、ない…。初めて見るが」 「やっぱりないかあ。売ってあるのここの自販機だけなんだぜ!でもいつも売り切れなんだ」 俺は円堂の話を聞いて、改めてジュースを見る。毎朝トラックが来ているからずっと売り切れ状態ということはないはずだ。それにしても…。 「何味だ?」 円堂と、いつの間にか隣にいた鬼道がこっちを見る。俺の疑問は声に出ていたようだ。 「やっぱ、ピーチじゃね?」 円堂は俺の想像と同じことを言う。売り切れの文字をじっと見る。するとどういうことだろう。急に飲みたくなってきた。ただ単に、興味をもっただけだが。 「いつも売り切れなのか?」 鬼道は、重心を少し前に移して円堂に話しかける。円堂はうん、と首を縦に動かす。 「飲んでみたいな」 俺達はそう言ってから、自動販売機から離れた。 翌日 「あー喉渇いた!」 左隣からずっと、円堂の同じ言葉が聞こえる。今日は学校が午前中で終わり、もっとも暑い時間に帰る羽目になってしまった。右隣を見ると、小さな声で何かを呟いている。手に持っているのは昨日のと同じ。今度は発音の勉強か。 「あ!」 円堂の大声に俺と鬼道は足を止めた。鬼道は単語帳から顔をあげ、首を傾げる。 「今日あるよ!」 円堂が目を輝かせて言う。そして円堂の後ろを見ると、昨日と同じ自動販売機。あのジュースのとこを見ると、売り切れという文字はどこにも表示されていなかった。 俺は、円堂に買ってみようと言おうと思っていたら、円堂はしゃがんだ。再び立ち上がると、右手にはあのジュースを持っていた。そして開ける。 たちを見て一度頷き、ジュースを飲んだ。 「どうだ?」 俺より先に鬼道が聞いた。お前も気になっていたのか。円堂を見ると、表情がだんだん険しくなっていく。そして。 「まずい」
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