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たちを見て一度頷き、ジュースを飲んだ。
「どうだ?」
俺より先に鬼道が聞いた。お前も気になっていたのか。円堂を見ると、表情がだん
「まずい」
と、一言呟いた。それでも、俺はどんな味なのか気になり、一口飲んでみることにした。匂いはしない。ジュースなのに、匂いがしない。覚悟を決め、飲んだ。
「…」
「まずいのか?」
鬼道が聞いてくる。俺はきっと、さっきの円堂と同じ顔をしているだろう。
「鬼道も飲んでみろよ」
円堂は俺の手からジュースを奪い、鬼道に渡す。鬼道は一度円堂を見てから、ジュースを受け取る。鬼道はしばらくジュースとにらめっこをして、勝敗は分からないまま、終わった。鬼道の喉が動いた。
「どう?」
円堂が聞く。鬼道の表情が気になる。いつも表に出さないその感情、これでも隠せるのだろうか。
鬼道の顔に変化はない。ただ、ジュースを見ている。俺は心の中で落胆した。
「…ぉいしぃ」
小さい声で、ここでは絶対に聞かないであろう言葉を聞いた。
「き、鬼道?今、何て」
俺は鬼道に確認する。どうか幻聴だと言ってくれ。
「俺は好きだぞ、このジュース…」
俺と円堂があまりに詰め寄るので、さすがの鬼道も語尾が小さくなっていく。
その後、ジュースは鬼道にあげ、サッカーの話をしながら帰った。そして鬼道は自分の家へと帰っていた。この場にいるのは俺と円堂だけ。
「鬼道さ」
円堂が口を開く。俺は黙って続きを待った。
「味覚変だよな」
俺は、ああ、と答えた。
終
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