1⃣始まりはいつも突然に

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  「それで?」 「それでって?」  香澄は自分の弁当に箸をつけながら、葉子の疑問符に首を捻った。 「あんたね、天然なのはいいけど。  自分が一体何を泣きついてきたのか覚えてないの?」 「あぁ、忘れてなんかないよ。お見合いの話ね。  葉子に叫んだらすっきりしちゃった」  さっきとは別人のように、ケロッとした態度で香澄は頷いた。  いつものことなのだが、あっさりとした彼女の性格に親友は嘆息する。 「でたよ、一回叫ぶと何でも吹っ切るあっさり癖が……。  それで、結局どうするのよ」 「一応、会場には行くよ?  この際折角だからさ、伸ばすだけ伸ばした髪も切って、イメチェンしようかと思ってさ。  だって、あのとき切ろうかと思ったけど、伸ばしかけの髪を切るの勿体無くて出来なかったんだもの」  香澄は自分の痛んだ毛先をひょいと摘みながら、過去を思い出したのか口を尖らせた。  あれから季節は何回流れたのか。  肩より少しだけ長かったセミロングが、今はすっかりロングの域に達している。  最近櫛で梳かすと、引っかかって困ってるんだよねぇ……、と呟く香澄を呆れ半分の目で見ながら、本当に吹っ切ったらしい過去に安堵していた。 「案外行ったらイケメンかもよ?」  「イケメンは好きじゃないもんねぇ。  可愛い女の子と綺麗なお姉さんは好きだけど」 「……あんた、案外ゲテモノ好みだもんね」  はぁ、と遠慮なく溜息を漏らした綺麗なお姉さんの友人に、香澄は言い返す。 「葉子のだんな様だって、ゲテモノに近いじゃない」 「世間的に見て、という一般論なら否定はしないけど。  それでもあたしにとったら最高に素敵なだんな様よ」 「――ご馳走様でした」  香澄の嫌味すらさらっと流し、尚且つ惚気た葉子に、敬服した彼女は素直に頭を下げたのだった。 *
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