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てくてくてくてく川添を歩いていると、前方から黒いスーツを着た30歳くらいの男が近付いて来た。
俺の前まで来ると黒男は、懐から取り出した手帳を
「私、こういうものですが」
と俺の目の前に突き付けた。
それは朱色の年金手帳であった。
(サラリーマンかい)
俺は思った。
「で、それが何か」
訳解んないので尋ねた。
すると黒男
「年金手帳、いりませんか。
これがあれば退職後も安心ですよ。
お安い価格でお譲りしますが」
なんて言う。
年金手帳を売るなんて、怪しい奴だ。
「自分は一冊持ってるんで大丈夫です。
誰か他の持ってない人に譲って上げて下さい」
丁重に断ると男は
「そうですか。残念です」
と、さっていった。
さらにてくてくてくてく歩いていると、今度は、12、3歳くらいの女の子が現れた。
その少女は、破れたチェックのシャツに、ツギハギだらけのスカートと言うような、みすぼらしい格好をしていた。
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