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それは大き目の弁当箱であった。
フタを開けると、やはり中身は、お弁当であった。
お握り、ウインナー、レンコン、タマゴ焼きなどが入っていた。
男は懐からオハシを取り出し
「私がアナタに、お弁当を、はーいあーん、て、この箸で食べさせて上げるんですよ。何がいいですか。タマゴ焼きなんかどうです?」
「ゲッ」
俺は少し、後ずさりした。
そして
「いや、やめとくよ。申し訳ない。おなかも空いてないし」
と手を振った。
柔道男は
「そうですかあ。解りました。よくこの辺で商売してるので、必要とあらば、声をかけて下さいな。では」
と去っていった。
可愛いネーチャンならまだしも、なぜ男に、はーいあーんで弁当を食わせて貰って金まで払わなくてはいけないのだ。
商売など成り立たないだろうに。
柔道着と言うのも意味が解らない。
さらにてくてくてくてく歩いて行くと
「ちょっと」
また誰かが声をかけて来た。
今度はなんだ。
そのほうを向くと、そばに、薄ハゲ中年男が出刃包丁を右手に持って立っていた。
「あの、何か」
と聞くと薄ハゲ男
「この包丁、切れ味抜群だよ」
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