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──*──
「手っ取り早く現状をまずは君に説明しようか」
あの後、部屋に入ってきた白衣の男は俺を数秒睨む様に見た後、付いて来たまえ、とだけ言って部屋から出ていったので、俺は慌ててその後を追った。その結果、ここに着いた訳だ。
「君は今、記憶を失った状態にある」
「……は?」
「やはりそんな調子で返事をしてしまうのか。という事は、今日もアイドリング状態だと見るのが妥当かな」
俺が呆然として何もしないでいると、白衣の男──確実に医者だろう──は落胆した様子で、机に置いていたカルテに黒のボールペンを走らせた。
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。いきなり俺が記憶を失っているとか何なんですか。ドッキリですか」
「うん? そんな反応は初めてだな。もしかすると、今日が始動なのかな」
そう言ってまたカルテにボールペンを走らせる、名前さえ知らない面の良い医者。そしてカルテから離したボールペンを俺の目の前に突き付けた。
「これは何か分かるかな?」
「ボールペン、でしょう」
「じゃああれは」
「カレンダー、ですね」
「あれは?」
「時計、です」
「ふむ、じゃあ……
君の名前は?」
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