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『…。』
いつの間にか眠ってしまっていたらしい。
目を開けると、
同じ天井
同じ布団の上
うまく動かない体…
これからは、この状態が変わらないものになるのか…
季節の変わる様子を見ることもなく、ただ時間が流れ、体は病に蝕まれ、闇が僕が来るのを口を開けて待っている…
『土方さんも気がきかないよね…せめて桜が見えるとこに部屋を移すとかさ…』
目を閉じて、そんな言葉を口にした。
すると…
『ん?』
右頬に何かが触れた気がした。
頬を指でなぞると何かが付いているのが分かった。
それを指先で取ると、小さなピンクの花びらだった。
『…桜?』
いや、そんなはずはない。
桜が咲いているのは僕の部屋とは真逆だったし、窓のないこの部屋に間違っても花びらが入ってくるはずはない。
あるとすれば少し開いた部屋の入口くらいだ。
『どうして…』
もう一度その花びらをよく見ていると、
『わっ…風が…』
聞き慣れた声が聞こえた。
『全部飛んでしまわないうちに持っていかないと…』
パタパタと小さな足音が近づいてくる。
もう足音だけで分かるようになっていた。風の音が強い。
外は春の風が吹いているんだろう。
寝たふりをしようか、それとも驚かせてやろうかと考えていたけど…
『え…』
逆に驚かされたのは僕の方だった。
先に見えたのは彼女の顔ではなく満開の桜の花…というか、枝だった。
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