第2章…お別れは突然に…。

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交通事故だった…。今日発売のCDを買いに行く途中に事故を起こしてしまったと聞いた…。 うつむいて目を真っ赤にして気丈にたえる父…。 堪えきれず泣き叫ぶ母…。 そんな母の背中を必至にさする幼い妹たち…。 意気消沈しうつむく祖父母…。 本田はただただ黙って弟の顔を見つめていた…。 もう夢でしか会えない弟を忘れないように…。 夕方、お寺から和尚さんがこられ、お経をあげてくれた…。 和尚さんが帰ろうとした時、本田は思わず駆け寄って聞いた。 「和尚さん…俺…涙がでません…。こんなに悲しいのに涙がでません…。俺は冷たい人間なのですか…。」 「いや…違いますよ…。別れが急すぎだからです。これからもっと悲しくなります…。あなたは弟さんが無事に天国へいけるよう気持ちを強くもってください…。お父さんお母さんを気遣ってあげてください…。それではまた明日に…。」 和尚さんは合掌し、帰っていった。 本田も頭をさげ和尚さんの背中を見送った。 和尚さんの言葉は正しかった…。その後も数多くの人が弔問に訪れ、弟の死を悼んだ…。親戚、町内会のみなさん、家族の友人、そして弟の友人…。 数多くの涙が流れた…。 涙の数だけ本田も、弟の死を無理にでも受け入れなければならないのだった。 お葬式の朝、空は弟の心を写したような曇り空で今にも泣き出しそうだった…。 本田は一晩中弟のそばにいた…。そして、弟との思い出を思い出していた。 幸、よく一緒に遊んだな、そしてケンカもした…お前はこの生きてきた20年、なにか生きた証みたいなのはのこせたかい?
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