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斎場につき、本田は火葬炉の前で弟といよいよ最期の別れをした。
「幸…しばらくサヨナラぢゃの…。また向うで会おう…。」
本田は棺の小窓から弟に話しかけた…。
火葬炉の扉がしまる…。
本田は涙を流しながら家族と弟の旅立ちを目に焼きつけた…。
斎場の係員の案内で待合室に案内されたが本田は思い出したかの様に一人斎場の外に歩いて行った。
雨は相変わらず強く降り、本田は煙突から天国へ向かって昇って行く弟を見ていた。
「幸、お前が吸ってたタバコ…棺に入れるの忘れてたわ…。一緒に吸おうや…。」
本田は弟が吸っていたタバコをポケットからとりだすと火をつけた。
「なぁ…幸、お前がやり残した事、全部とは言わないけど、俺がやってやるけぇの…。見とっての…。」
タバコの煙も弟と一緒に昇って行く…。
本田はずっと煙の行く先を見ていた…。
しばらくすると、妹達も外に出てきた。
「お兄ちゃん…。」
見るからに妹達は不安げな様子に見てとれた。
「ああ…。しばらく親父もおかんも元気がでないと思う。兄ちゃんはまた仕事しに糸崎に帰らないといけないから、親父とおかんの事頼むぞ。」
本田も内心いろんな不安で心が揺さぶられていたがまだ幼い妹達に酷なお願いをした。
「見てみ…幸が天国へ行きょうるよ…。」
妹達もいろんな想いを胸に煙の行く先を見ていた…。
「さ、みんなのとこに帰ろ…。」
本田は妹の背中をポンと叩いた。
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