第1章…海沿いの町から。

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ガタンゴトンガタンゴトン…海沿いの町に4両編成の普通列車が走ってきた。 列車から右を見るとミカン畑、左を見ると青い海が見える、海には外国からの大きな貨物船が停泊している。 「後少しで糸崎か、今日も何事もなく無事に終ってよかった…。」 本田はブレーキに手をかけ停車の準備にかかり、フゥと息をついた。 前方にお宮が見えてきた、もうすぐ駅だ、少し早めにブレーキをかけ、列車はゆっくりホームに停車した。 「よぉ、お疲れさん」 駅には本田の同僚の広山が待っていた。 「今日合コンだったよな」 「おぅ…。」 本田は少し憂鬱そうに答えた。 本田は自分が太っていて口下手で到底モテるわけもないと分かっていたから合コンとかいう場所もあまり好きじゃなかった。 しかし、本田も年頃の男だから彼女が欲しいし、人並みに恋もしたかった、しかし自分の容姿にどうしても自信がもてなかった。 「まぁ楽しんできんしゃい」 少しハニカミ笑顔を見せて広山が乗務する列車は発車して行った。 本田はまた憂鬱そうな顔をして列車を見送った。 寮に帰って身仕度を整える…しかし着飾った同僚の中で本田の服装はあまりに地味だった。 同僚と待ち合わせの店に向かう、隣りの三原駅まで一駅、期待でテンションが上がっている同僚とは裏腹にやはり本田はどことなく憂鬱な表情で車窓をぼーっと見ていた。 待ち合わせの店に着くともう女の子達はやってきていた。上から下までキチンと着飾り、甘ったるい香水の香りが本田をさらに緊張させた。
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