第2章…お別れは突然に…。

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あのひどい仕打ちをされた合コンから数ヶ月…。本田の生活はとくに変わった事もなく、ただ毎日淡々と仕事をこなしていた。 (明日も仕事かぁ…。明日も泊まり勤務だから今日は昼寝でもしよう…。) 「お疲れ様です」 乗務員区に帰ったが今日はなにかがおかしい…。 勤務の乗務員が何人もいるのにみんな本田を見るなり小さく頭を下げ目をふせた。 「本田、ちょっと…。」 当直の助役さんもなぜか暗い表情を浮かべて本田を呼んだ。 「どうかされましたか…?」 本田もみんなの普段見せない表情に緊張しながら当直に向った。 「本田…落着いて聞きなさい…。昨日、晩不幸があった…。帰区報告はいいから、早く帰りなさい…。」 泊まり勤務の眠たさも一気に吹き飛び本田は血の気がサーッとひいてみるみる表情がこわ張った…。 「祖父ですか?祖母ですか…。」 「いや…弟さんだ…。早く帰りなさい。」 「分かりました…。お先に失礼します…。」 本田は精一杯、気丈に答えた。 「本田、いけんかったの…気をつけて帰るんど…。」 「本田…元気だせよ…。」 近くにいた職場の同僚も心配そうな表情で次々に本田を気遣った…。 「失礼します…。」 本田は一礼すると、急いで実家へ帰宅した…。 本田の実家は岡山県と広島県の境にある。糸崎から車で1時間少々かかる道のりだったが、今の自分の状態では車の運転は危険だと判断した本田は列車で実家に帰宅した。 列車の中で本田はいろいろな事を考えていた…。 弟はなぜ死ななければならなかったのだろうか…家族は大丈夫だろうか…。 俺は…最後に弟とどんな話をしたんだろうか…。 実家に近づくにつれ、本田はさらに表情をこわ張らせた。そして実家に到着するとちょうど弟の遺体が寝台車に乗せられて部屋に運ばれているところであった…。 本田は震えながら弟の顔にかけられた布をとった…。 「…。幸…。」 まぎれもなくそれは弟だった…。本田は弟の血の気がひいて白くなってしまった顔を見つめて呟いた…。
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