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「……ああ、暇だ」
無数のランプが薄暗い部屋を幻想的に照らす。
室内には、ソファーとテーブル、後は、クローゼットがあるだけの寂しげな部屋だ。
「なら、お掃除を手伝って下さい。雑用なら山ほどあります、きっと楽しいですよ」
部屋を掃除する真っ赤なスーツに白いエプロンを着たワインレッドの髪を靡かせた女性が嫌味たっぷりな口調で言った。
「コレさ、あと一面で揃うんだよな」
女性の背後には、緑色のソファーに凭れながらルービックキューブを弄る青年が居る。
女性の話を全く、聞いていない様だ。
先ほどから、暇だと言いながらも、それを弄くる手は止めようとしなかった。
「意外と難しいな。つか、眠い」
「貴方は人の話を聞く、という初歩すら出来ないのですか?」
女性の台詞に耳を傾ける事なく、ルービックキューブを傍にあるテーブルに置くと、あくびをし、指を鳴らす。
同時に部屋の灯りが全て消え、暗闇が支配した。
「お休み、紅。戸締まりヨロシク」
その言葉を最後に、部屋は静まり、若干、寝息が聞こえた……もう眠ったのだろう。
深紅を纏う美女は、深々と溜め息をついた後、ブツブツと小言を言いながら部屋を出て行ったのだ。
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