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「で、続きを話すぜ。ま、嫉妬深いお姫様は、後に捕まって処刑されたんだが、そのお姫様が大事にしていたコレに映るんだよ」
浮舟は、鏡に軽く触れながら言うと、チラリと古谷を見た。
青ざめてはいるが、先を聞きたいという好奇心に満ちた目をしている。
それを見て、浮舟は更に続きを語る。
「映るって……何でだよ?」
「そりゃ、お姫様がこの鏡を大層、気に入ってるからさ!自分を美しく映す鏡って事だけで、大事に大事にしてたらしいからな!」
美に執着し、嫉妬深さ故に恋人に近付く女性を次々と惨殺し、最後は非業の死を遂げた。
まだ現の世に未練があるのか、死して尚も、執着しているのか……あの鏡には姫君の〝想い〟があると浮舟は語る。
「……」
古谷は、固唾を飲んで鏡を見る……鏡には、自分と浮舟しか映らない…。
「見て見たいか?お姫様を」
「へ?見れんのか?」
浮舟の放った台詞に、古谷が目を見開いた。
「丁度、お姫様が姿を表すタイミングだ!よーく見とけよ?」
浮舟が指を鳴らすと、店内の灯りが全て消え、すぐにライターの灯りが二人を照らす。
浮舟は、鏡の方に指をやる……古谷がやその方向に目線をやった時だった。
純白の上品なドレスを纏い、プラチナブロンドの髪は、ほっそりとした腰まで長い……大きな二重の瞳は、深海の様だ。
憂いに満ちた美女が此方を見ていたのだ。
彼女は微笑みを古谷に向ける。
その数秒後、姫は鏡から姿を消し、同時に店内に明るさが戻る。
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