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「あの鏡の譲渡書だ。あの鏡はお前……いや、古谷巧の物だ」
「……あ、ああ…」
羊皮紙を受け取りる。確かに譲渡書には、古谷自身の名前があるのを確認し、古谷は満面の笑みを浮かべた。
浮舟が、何故、名前を知っているかと一瞬、考えたがどうでも良かった。
「紅、用意できたか?」
「はい。では……古谷様、商品です」
何処から現れたのか、ワインレッドの髪、深紅で統一された華やかなスーツを纏った美女がいた。 浮舟とは違い、無表情だ。
紅と呼ばれた美女は、布でくるまれた鏡を丁寧に古谷に手渡した。
「本当にいいのかよ。多少なら、払うぜ」
「いいや、代金はいい。俺の店の商品は自らの意志で持ち主を選ぶからな、大事にしてやってくれ」
そう言って、浮舟は恭しく一礼をすると、ソファーまで戻り、腰掛けた。
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