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昔々、
ある所に、空手を極め「拳聖」と呼ばれるほどの達人のおじいさんと
剣術を極め「刀仙女」と呼ばれるおばあさんがすんでおりました。
ある日、おじいさんは薪を取りに山へ、おばあさんは洗濯をしに川へ向かいました。
おじいさんは、薪となる木を手刀と足刀にて次々に切り落として、およそ2百キロ程の薪をかき集め、その薪を軽々と担ぎ、家へと意気揚々と帰っていました。
おばあさんは、細身の棒を手に持ち、自慢の剣技を使い、洗濯をしておりました。
洗濯物が残り1/3ほどになった頃に、ふと川上に目をやると、全長1メートルほどの桃が流れてきました。
それを見たおばあさんは
「なんと大きい桃でしょう!アレを持って帰っておじいさんに食べさせてあげましょう!」
と思い、手に持った棒で水面を叩くと桃がふゎりと浮き上がり、巧みに掬い上げ、家にもってかえりました。
家に帰ると、庭先でおじいさんが取ってきた薪を手刀で更に細く割っていました。
「おじいさん、ほれ!こんな大きな桃が川上から流れてきましたよ。」
と両手で抱えた桶から、はみ出さんばかりの桃をおじいさんに見せました。
「ほほぅ!こりゃ大きな桃じゃな!今までに見たこともないわい。」と薪を割りながら、驚いていた。
「でしょう。さあさ、家に入って食べましょう。」
おばあさんは先に家に入り、おじいさんは残った薪の前に立ち、
「さて、急ぐかの…。ふん!」
と、地面に震脚を踏みました。
すると、薪が一斉にはね上がり、目の前の高さまで浮き上がりました。
「しっ!」
と短く息を吐くと、瞬く間に正拳、手刀、足刀、と空手技で、薪を細かくし、縄で結びました。
「これでいいじゃろ。」
と家に入っていきました。
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