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家に入ると、おばあさんがまな板を床に置き、その上に先程の桃を乗せていました。
「おじいさん、ちょっと待っててくださいね。」
とおじいさんに微笑むと、台所へ向かい、1メートル程の鍔無しの日本刀を手に持ち、無表情で戻ってきました。
おじいさんはその姿を見て、背筋に冷たいものが走りました。
「ば、ばあさん!頼むから、刃物を持つときは、殺気を出さんようにと言っとるじゃろう!」
とおじいさんが言うと、
パッといつものおばあさんの表情に戻り、
「あらあら、私ったら…」
と笑っていた。
「はははは…。」
おじいさんは、強ばった笑顔でただ笑うしかなかった。
「それじゃ、切りますかね」
とおばあさんは、左手の親指でスッと刀を軽く開く。
右手で刀の柄を軽く握るとすぐにチンッと刀を納めた。
すると、桃の下の方から縦にまっすぐ切れ目が入っていました。
桃の横で胡座をかいていたおじいさんは、
「相変わらず、見事な居合いじゃの。」
と感嘆していました。
おじいさんはおばあさんの方を見ると、何やら怪訝な表情をしていました。
「……?」
「どうしたんじゃ?」
「いや、何か堅いものに当たって、キレイに切れなかったんですよ。」
「なんじゃと?」
「種かとは思いますがね…。種ぐらいだったら、普通には切るんですがね…。」
二人の視線が桃へ向くと、桃に入った切れ目がどんどん広がり、中から大きな丸い種が二人の前に現れ、その種にも縦にまっすぐ切れ目が入り、二つに分かれました。
すると中から、
「オギャア!オギャア!」
と桃の印の入った金属の延べ棒を抱えて泣く赤ん坊が現れました。
これには二人はビックリして、おじいさんは赤ん坊を指差しながら、口をパクパクさせて、ものが言えず。おばあさんはその場にヘナヘナと座り込みました。
「お、おじいさん!」
「ば、ばあさん!桃の中から赤ん坊が!!」
そうお互い言った後、しばらく二人は固まってしまいました。
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