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人影を見ると、服装は農民の様な身なりに浪人の服装とバラバラの格好をしているが、虚ろな眼をして、頭に角を生やしていた。
手には棍棒、刀といった武器を持っており、その風貌は、まさしく鬼といった感じだった。
そして、何時でも掛かってきそうな雰囲気を醸し出してきていた。
桃太郎は今すぐにでも飛び出していきそうでしたが、おじいさんが左手で桃太郎を制して
「桃や、下がっていなさい。」
そう言い、一歩前に出た。
「ほれ。掛かってこんか。」
そう言うと、物凄く重い殺気を放った。
鬼達は一瞬怯んだが、武器を握り締め、一斉に掛かってきた。
おじいさんは、真っ先に掛かってきた一体の鬼の刀を体を右にずらしてかわし、左の抜き手で喉を突き、吹き飛ばした。
そして、右側から来た鬼の懐に摺り足でスッと入ると同時に、鳩尾に右の肘鉄を突き入れ、一撃で倒し、左側からの鬼の刀を両手で挟んで、左横に捻って抑え、右足刀で喉を蹴り上げた。
その間、わずか五秒。
「残りはお主だけじゃな。」
と、おじいさんは刀を地面に捨て、残り一体のとなった鬼を見た。
鬼は無言でおじいさんに近づき、おじいさんからおよそ2メートル程の位置で腰に構えた刀の鞘を握り、軽く柄に手を置いて、足を前後に開き腰を落としていた。
「ほぅ…。居合いか…。なかなか腕が立つようじゃな…。どれ、少々本気を出すかの…。」
そう言うと、足を前後に開き、腰を落とし、左手を前に出し、右拳を腰に構えた。
桃太郎はその様子をジッと見ていた。
お互いの間の空間が捻れていくような錯覚が見えるほどの緊縛した温度が桃太郎には感じ取れていた。
先に動いたのは鬼で、鬼が刀を抜くか抜かぬかの刹那!
おじいさんの姿が一瞬歪んだと思うと、次の瞬間には、2メートル程の距離は一瞬で縮まり、鬼の鳩尾に右正拳を叩き込んだ姿がそこにはあった。
おじいさんが右拳を引き、少し間合いを取ると、鬼は前に崩れ落ち、うつ伏せに倒れた。
倒れている鬼の服の背中部分が破れていた。
「う、裏当て!?」
桃太郎は、余りの一瞬の出来事に驚きながらも、おじいさんの放った技を思い返していた。
「そうじゃ。先程の技じゃよ」
おじいさんは桃太郎の方を振り返りながら、ニッコリ笑顔で答えていた。
そのおじいさんの笑顔を見た後、桃太郎は自分の両拳を見ながら、
『人はあそこまで強くなれるのか…』
と改めて、"強くなりたい"という思いを深くしていた。
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