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<たまにしか、してあげられない事>
いつものようにトキワの森からポケモン達と自宅へ帰って来たライムが見た光景は、惨劇に近い光景だった……。
「………お兄ちゃんいったい何してんの?」
私が家の中入り、階段を上りとある部屋に入ると………フライお兄ちゃんが部屋の中をありえない位散らかしていた。
ただ、ちょっとした物が散乱しているとか、本がちゃんと本棚にしまっていない状態だったらまだ『惨劇』と例えるまでは至らなかったと思う。でも……私の見たその散らかりようは……本当に『惨劇』レベルだった。
「あ!ライム!帰って来てすぐで何なんだけど、ちょっと手伝ってくれ!!」
「先に何があったか説明して。ここまで散らかるとかいくらなんでも異常過ぎ」
いつものように冷静、というか冷たいツッコミを一発入れ、私は兄を少々シケたような目で見る。
「ほら、この部屋だろ?前に母さんがアルバムしまってたの」
「え?う、うん。確かそうだったはずだけど……何で?」
意外な返答に少々驚きながら、私はお兄ちゃんの問いにとりあえず応える。すると、お兄ちゃんはこちらを向きながら、悪戯っ子がするような笑顔も向けてきた。
「今度父さんが久しぶりに帰って来るみたいなんだ」
「え!お父さん帰って来るの!?珍しいね」
お父さんは、最近ポケモン協会からの仕事の依頼が殺到して、家に帰って来る事がなかった。
確か最後に帰って来たのは………、1年以上も前だったような気がする。
それもあって、私は今お兄ちゃんからお父さんが帰宅する話を聞いた瞬間のリアクションはかなりオーバーになったと、一応自分なりに分析している。
「ずっと父さん帰って来なくて母さん寂しそうだったからさ。たまには家族皆でアルバム見たりするのも良いかなー、って思ったんだ」
「………………ふーん」
お兄ちゃんらしいのか、らしくないのか。まぁ、どちらかと言えばらしいかな。
そう考えながら、そのまま作業を続けるお兄ちゃんの隣まで移動し、無言で作業を手伝う。
最初、お兄ちゃんは私の行動を見て手を止めたが、くすっと笑ったのが気配で感じられた。
そしてこの数日後、無事お父さんは帰宅。4人仲良くお父さん達が子供の頃の写真や、私達が生まれた後の写真を沢山見た。
その時、いつもよりお母さんが笑顔だった事に、私は2人よりも早く気付いた。
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