20人が本棚に入れています
本棚に追加
<彼女の気遣い>
とある日のマサラタウン……。
「ん、ナナミ姉さん?」
久々に我が家に帰ってきたグリーンは、姉・ナナミの姿を見て驚いた。
というのも、ナナミはマサキの元で助手をしていて、マサラの家にいるはずがないからだ。
「あら、グリーン久しぶり。ちゃんとご飯食べてた?」
「まぁそれなりには。…………それより、何で姉さんが?」
そう問われ、ナナミは『あぁ』と呟きながら、グリーンの方を再度見る。
「マサキさんとブルーちゃんに言われてね。たまにはマサラに帰って来ないとグリーンも寂しがってると思うからって」
「マサラとブルーが……………………は?」
ナナミの言葉を一瞬納得しかけたグリーンだったが、言われた言葉を再度己の口で言った事で違和感を覚えた。
「マサキと………誰だって?」
そう言われたナナミは、少々呆れながら、先程より少し大きな声でグリーンの問いに再び答える。
「だから、ブルーちゃんよブルーちゃん!あの子、貴方の事よく見ているのね。姉さん安心しちゃった」
「え………それっていったいどういう………」
「安心したから戻るわ。ブルーちゃんと喧嘩しちゃダメよ?」
「だからどういう意味」
「それじゃまた来るから~!」
バタンッ!
「……………」
わけが分からないまま去って行ったナナミがいたドアを見ながら、グリーンはその場に立ち尽くす。
暫くそのまま固まっていたが、ようやく何故このような事態になったのか理解した。
『ねぇ、グリーンってナナミさんが帰って来なくて寂しい時とかないの?』
『………別に寂しいとかそういうのはないが……たまには帰って来てほしいな。おじいちゃんも姉さんに会いたがってたし』
『………ふ~ん』
つい数日前のグリーンとブルーの会話だ。
つまり、この会話でブルーはナナミにマサラに戻るよう促したのだろう。まぁ、さすがにマサキはブルーの共犯者ではないだろうが。
「全く。……………うるさい女だな」
そう呟くグリーンの表情は、僅かに喜びの感情が見え隠れしていた。
最初のコメントを投稿しよう!