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<黄色の憂鬱>
トキワ・イエロー宅
「はぁ……」
ブルーがのんびりと紅茶を飲んでいる最中、隣で同じく紅茶を飲んでいるイエローが大きな溜息をついた。
「……何したの?イエロー」
さりげなくブルーはイエローに話し掛ける。
すると、話し掛けられたイエローは、ゆっくりと首をブルーの方に向ける。
「ブルーさん……ちょっと聞いていただきたいんですが……」
「何?どうしたの?」
表ではいつも通りに振る舞うブルーだが、正直内心はあまり穏やかな気分ではなかった。
というのも、実はイエローが溜息をついた理由。そして、自分に聞きたいと思っている事がブルーには分かってしまったからだ。
そんなブルーの内心の曇りに気付かず、イエローは暗く重い表情を浮かべながら語り始める。
「実は昨日、レッドさんと会う約束してたんです。でも急にポケモン協会の理事から仕事の依頼がきたからまた今度会おうって、言われて………」
ここで口が止まり、少しずつイエローの瞳に涙が溢れていく。
「最近ずっと会えなかったから楽しみにしてたんですよ?それなのに………仕事が入ってきて………。やっぱり僕達相性が悪いんですかね?しょっちゅうこんな事あるから、参っちゃいますよ。あはは………」
口では笑っている。しかし、表情全体が、先程よりも重く涙で湿っているような、そんな雰囲気にイエローは包まれているようだった。
その雰囲気を敏感に感じたブルーは、顔が俯いているイエローの方を向いた。
「イエロー……あたしだって、グリーンに対して凄くイライラしたりする時あるのよ?」
少々俯いていたイエローが、目だけをブルーに向ける。
「ジムが忙しいから会えないのは当たり前だし、約束しても来ない時もあるし。……でもね」
そう呟くと、ブルーはイエローの頭に自分の手を軽く乗せる。
「何だかんだで自分の事ちゃんと思ってくれてる、って思うと、イライラしてる自分がどこかに消えていく感じがするのよ」
ブルーはそこで話を区切り、再度イエローを見る。
「それに相手を信じていれば、いつまでも一緒にいられる。そんな気もするのよね」
「……信、じる」
ぽつりと呟いたイエローに対して、ブルーは頷く。
「そう。だから貴女もレッドを信じてやりなさい。レッドもイエローを信じているはずだから」
そんなブルーの言葉に対し、イエローは力強く頷いた。
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