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<『雨の日の最良の過ごし方とは……(中編)』>
三人揃って黙り始めてから、少なくとも30分は経過していた。
………正直言うと、この三人が30分も静かにしていた事に少々驚いた。とくに、一番賑やかなゴールドが静かだった事に対しては、違和感も抱いてしまった程だ。
そんな事を考えていると、誰かポケギアの音が部屋全体に響いた。
………どうやらクリスのポケギアが鳴ったらしい。誰かと話している様子が伺える。
「はいはい……え?はい、分かりました。すぐ行きます」
通話が終わるやいなや、クリスは直ぐさま着ていた白衣を脱ぎ、代わりに上着を着はじめた。
その慌ただしい様子を見ていた俺とゴールドだったが、ゴールドは珍しく見ているだけで何も言わない。……まだ喧嘩の時の事を引きずっているとしか思えないような表情を浮かべているので、こちらとしては何とも言えないのが真情だが……。
「今博士から連絡があって、30番道路で珍しいポケモンを見つけたから来てほしいって。だからちょっと行って来る」
……さすが捕える者、ポケモン捕獲のスペシャリスト。こういう時に助手であるクリスに博士はかなり頼っているのが伝わってくるなぁ、と返事をしつつそう考えた。でも、こんな大雨の中女の子一人行かせて良いものだろうか?
が、そんな事を考えているうちにクリスはいつの間にかその場から姿を消し、外に出ていた。
「………なぁ」
クリスが出ていって数秒経った頃、それまでずっと黙ったままだったゴールドがようやく口を開いた。
「どうした」
「……何か、いつもより盛り上がらないな」
ゴールドの言っている事が最初は理解出来なかった。でも、暫くして、ようやくその言葉の意味が分かった。
何となくではあるが。
「………そうだな」
「前、つか仮面ヤローの事件の後か?その頃、集まったら今よりもっと盛り上がったんだけどなぁ………」
ゴールドはそう言い、再び窓から外の様子をただただ無言で見続ける。そんなゴールドに続くように、俺も一緒になって外を見始める。
俺達二人は、クリスと博士が戻って来るまでの間、ずっと外を見ていた。ただ、じっと、大量に降ってくる大粒の雨を。
時刻はもうすぐ昼。この時の雰囲気は、何となく痛々しさを感じさせられるような、そんな雰囲気だったように思えた。
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