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嫌な予感はしていた、出てくれと祈りながら携帯を耳元に当てた、しかし、俺の祈りは虚しく姉が出ることはなかった。
一体姉はどうしたのか、最悪のシナリオが頭に浮かぶ、必死に頭を振ってその考えを否定する。
まさか、殺される筈はないよな。いや、あり得ない、動悸が激しくなり、視界が霞んで見えてくる。
落ち着け。冷静になれ。
繰り返しその言葉を言って気分を落ち着かせた。
しかし、俺の煩悶(はんもん)を他所に時間は刻々と過ぎて行く。
止まっていても始まらない、しかし、姉の友達も誰一人として分からないので、どう動いていいのか分からなかった、警察に言うべきか、いや、まだ行方不明と決まった訳ではない。言ったところで、到底取り扱ってくれるとは思えなかった。
もしかしたら、友達の家にでも行っているのかも知れない、しかし、其ならば、メールを寄越す筈である。
俺は知らず知らずの内に学校近くまで来ていた。
余程思い悩んで居たのか、気が付いたら、学校近くにいたのだ、これ程までに、悩んだことはそうそうない。
正門はもちろん閉まっていた。何故、俺は学校に来ているのか、自分でも分からなかった。
「鶴来さん」
聞いたことのある声に話し掛けられた。 声のする方を振り向くと、すぐ横に明石雪が立っていた、いつの間に…いや、それよりも何故ここに、しかし、今はそれどころではなかった。
「明石さんか、姉さ…いや、鶴来千鶴(ちずる)って知ってるか?」
「知ってるわ」
「何処にいるか知ってるか?」
「ええ」
ニコリと微笑む彼女、だが、彼女の顔にはどこか不気味さを孕んでいた、しかし、何故、こいつが姉の場所を知っているのか、いや、もしかしたら姉と友達なのかも知れない。しかし、今は一刻も早く姉の場所を確認したい。
「何処にいる」
低く冷たい声でそう言うと。
「体育館よ」
彼女は学校を指差して、そう言った。
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