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体育館、彼女は確かにそう言った。 そして、直ぐに俺は彼女が昼休みに言った「悪魔に連れていかれた」という言葉を思い出した。
「姉さんはそこにいるのか?」
彼女が頷いた。
「悪魔か…?」
「ええ、悪魔」
普通ならば信じられないことなのだが、何故か彼女の言葉は真実のように思えた。
しかし、姉が体育館にいるのか、という、疑いも少なからずあった。
「姉さんは大丈夫なのか?」
「ええ、まだね」
まだ、とはどういうことか…俺は直ぐに体育館に向かいたかった。
「鶴来さん、やっぱり私と貴方は似た者同士ね、正直貴方がここに来たのは驚いてる」
そんなことはどうだっていい、俺は彼女の言葉を無視して正門をよじ登った。
「鶴来さん、待って、場所わからないでしょ?」
確かに分からなかった。
彼女を待つことにした。
彼女の登る仕草まで、上品さを漂わせていた、というか、運動神経が良いことに驚いた、登り終わり、体育館へ向かった。
夜の校舎は不気味だ、物言わず聳(そび)え立つ、巨大なコンクリートの塊は精神的な圧迫感を覚える。
体育館に向かってる間、お互い無言だった、俺はその方が良かった。 今は姉のことだけしか考えられない。
しかし、本当に姉はここに居るのだろうか。
「入るわよ」
いつの間にか、体育館についていたようだ。
「鍵は?」
もっとも、なことを聞いた。鍵がなければ入れない。
「ないわ」
じゃあどうやって、入るんだよ!
考えを口に出そうとした刹那、ギギと音を鳴らしながら扉が開いた。
「え?」
余りの出来事にすっとんきょうな声を出してしまった。
「どうやら、歓迎されてるみたいね」
彼女はそう言うと体育館に入って行った。
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