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確か、1番始めに自己紹介していた…明石雪だっけ。その明石雪と目が合った。いや、厳密に言えば見られていたと言う方が正しい、目が合った時に明石雪は俺を見て微笑んだのだが、違和感があった、確かに微笑んでいたがそれは口元だけあって目は笑ってはいなかった。そのまま明石雪は何事も無かったかのように、正面へと向き直った。俺は直感で今までの視線の原因はこの明石雪の視線ではないのか、そう思った。いや、考え過ぎかもしれないが…しかし、案外、自分の直感を馬鹿にしてはいけない、まあ、そう言えるのも意外と自分の直感は当たるからだ。
そのまま午後の授業も終わり、放課後、俺は、一人で帰る準備をしていた。教科書を鞄に入れている時に
「鶴来さん、でしたよね?」
不意に声を掛けられてビクリとした、俺が顔を上げるとそこには明石雪が立っていた、今までの声を掛けてくる生徒が居なかった分、俺は嬉しかったと思う。彼女の顔を間近で見ていなかった分こう改めて見ると、名前の通り雪の様に色白でさらりとした眉毛に掛からない程度に、切り揃えられた前髪に、整えられた眉毛と綺麗な二重、俺を見つめる彼女の澄んだ瞳の奥には、どことなく儚さを孕んだ感じが見え隠れしていた。
「何?」
何故か素っ気なく答えた俺は、きっと心の底では何故俺に声を掛けたかという不信感が有ったのだろうか、友達が欲しいと思っていた俺は、明石雪に対するこの対応は正直、矛盾していると思う。しかし、何故かそう答えてしまったのだから仕方がない。
「田端先生が気になるでしょ?」
彼女の冷たい言葉が、俺の耳に冷風の如く吹き抜けて行った。 何故、彼女は俺にそんな事を言うのだろうか、俺の疑問を他所に彼女は続けた。
「私は先生がどうなったか知ってる」
一瞬、彼女が何を言っているのか、理解出来なかった。「知ってる」とはどういう事なのだろうか、まさか、彼女が先生を拉致でもしたのか、俺の疑問を、分かっていたかのように、いや、それを俺の予想の遥か斜め上を行く答えを返した。
「先生は連れて行かれたわ、悪魔に」
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